2008年3月30日日曜日

隠れ猫

 山荘の人気者は、「もも」である。猫である。ロシアンブルーである。小心者である。だから、たいてい、見えにくいところに寝ている。たとえば、カーテンの裏の日当たりの良いところ、たとえば、保護色となるような布地の上、たとえば、棚の上部である。季節によっても、気候によっても、一日の時間帯によっても、居所が変わる。居心地の良さが変わるのだろう。
 もう一度言うが、「もも」は、小心者である。だから、ちょっとした音にも驚き、逃げ隠れる。小さめの音には、逃げなくとも身構える。かすかな音には、身構えなくとも、音の方向を凝視する。だけれども、「もも」は、ポリ袋が好きである。ときたま、すりよって、じゃれるように、すりすりとポリ袋の音を立てる。
 「もも」は、淋しがり屋でもある。山荘の人が来ると、おきてきて、わざとばたばたと走ったりする。人の視界に入り、存在を強調する。それから、近寄ってきて、接触する。
 でも、「もも」は小心者である。山荘に来る人には、隠れる。隠れて、じっとしている。もっとも、この山荘自体も世の中から隠れているようなものなのだけれども、「もも」は、さらに隠れているのだ。

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