2008年3月23日日曜日

雨男に雪男に蜘蛛男に蠅男に蛇女

 父、太郎も、それでも、最近は、あまり引きこもらなくなった。
 スランプなのかもしれないので、「スランプなんでしょう」と尋ねたら、「何か、惹きつけられるぐっとくる面白い謎、謎がないんだよね。謎が」なんて、三つも形容詞を付けた謎を強調して嘆いていた。どうも、最近、面白い題材が見当たらないようだ。「最近、面白いものない? 面白い本とか出来事とか、知らないかなあ」なんて、お問い合わせをよく受ける。
 けど、めんどくさいので、いつも、「ない」の一言で済ませている。 
 いつぞやは、「落書でも、苦しくなってきたなあ」なんて、訳の分からないことをいっていた。何を言っているかわからなかったが、ちょっと考えて、落書きは楽書きということらしいと思った。親父ギャグだな。
 父、太郎は、言葉に興味がある、たぶん、あると思う。近頃は、「死神の精度」にでてきた、「醜いと見えにくい」、「雨男と雪男の違い」なんかを面白がって話してくれた。そんなに面白いとも思えないが、とにかく、面白がって話す。 だから、そんなことが、面白いんだろうな。
 「そうだな、付け加えれば、蜘蛛男なんてのもありだろう?」ていったら、「なるほど、それなら、蠅男なんてのもいたな」なんていう。
 「そんなら、蛇女だっているぞ!」でも、蠅男って誰だ?
 そうだ! 本は、まだ、読んでないけど、でも、さきに映画を見ちゃったもんね。死神の精度!
 こないだは、卒業式シーズンだからか、巷で、いかにも卒業式にゆくのにいそいそと歩いていた羽織袴の女の人を、ぼーっと見ながら、「「かいさんのつきのつぎのつきはかいこうのつき」なんて、早口言葉にどうだろう?」なんて、まったく見当はずれのことをぼそっと言った。
 いったい何を考えているんだ??
 まったく、意味不明なので、「どういうこと?」と尋ねたら、おもむろに、肩に掛けていたバッグから、鉛筆とメモ用紙を取り出し、「解散の月の次の月は邂逅の月」と書いて、「3月の次は4月と言うこと。分かるよね」だって。
 書いてまで説明しなくてもいいんだよね。四の五の言うな。いや、書くな。

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